唐揚げ
テーブルの中央にそそり立つ唐揚げと惣菜コロッケの山。その隣には千切りキャベツの森。それを取り囲むように並べられた茶碗の飯、味噌汁、湯呑みと箸が6セット。 これが男四人兄弟で育った俺の日常的な夕食だった。 果汁100%のレモンが振られた唐揚げは山頂付近だけ異様に酸っぱいし、適当な渦を描いたマヨネーズはキャベツの山裾までは行き渡らない。 それでも争奪戦になる。頭脳派の長兄、腕力の次兄、小狡い弟。俺の戦利品はレモン果汁のかかってない唐揚げと、マヨネーズのかかってないキャベツに甘んじる。
あれから数年。イッタラの青いプレートに揚げたての唐揚げが5個。付け合わせのキャベツの横にはミニトマトとパセリ、それに串型のレモンが添えられている。 「今日の唐揚げね、バズってるレシピで作ったんだ〜」 「うっまそ。いただきます」 パチンと手を合わせ、レモンを満遍なく唐揚げに絞る。それから満を持して、まだ油の跳ね音が残る唐揚げを頬張った。 「あっち。ひつもほり、ほろもがさくさくで、こしょうが、効いてて、」 そこまで言って、火傷しそうな口にビールを注ぐ。 「すごく美味い」 テーブルの中央には、名前のよく分からない花が飾られ、そのさらに向こうに座る妻は、ピンクベージュのカットソーがよく似合う。 「よかった。ね、マヨネーズも作ったんだよ。食べてみてよ」 「何でも作れるよね、凄いな」 ガラスのココットに入ったマヨネーズを、ふわふわのキャベツにかける。クリーム色はすぐに淡いグリーンの中に吸い込まれていった。それを見て、赤いキャップのマヨネーズが、ほんの少し恋しくなった。 「今度さ、キャベツも唐揚げも2人分をお皿に盛ってよ」 「なんで?」 「なんとなく」 曖昧に笑って答えることができなかった。 「美味しい?」 「うん。すごく美味しいよ」
WRITTEN BY
一人ジェンガ2言葉の練習帳。
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