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二人分の影

サカヅキ·453·投稿 2026.04.24·更新 2026.04.24

 ちりりん。ちりりん。  自転車のベルが鳴る。  彼女を後ろに乗せて、夏空の下を飛ぶように田舎道を走る。  舗装されていない凸凹したリズムに合わせて体が跳ね、髪が踊る。 「暑いね」  後ろから聞こえる彼女の声に、気持ち大きめな声で「そうだな」と答えた。  熱いのは、きみのせいでもあるのだけど。  車輪は軽快に回る。  蝉時雨を縫うように林道を通り抜けると、再び二人の頭上に真夏の太陽が輝いた。 「ねえ」  彼女の声。 「明日も走らない?」 「昨日も聞いた」 「そうだっけ?」 「そうだよ。好きなのかい、」  自転車を走らせるのが。  それとも、俺が。  後者を口に出そうとして、慌てて飲み込む。  少し間を置いてから、彼女は答えた。 「この時間が好き」    どちらにも取れる回答をされたら、都合の良い解釈をしたくなる。  そうしたい。  そう、口にできる勇気があれば。    ハンドルを強く握ると、すぐさま汗ばんだ。  日差しが責めるように肌を焼く。    ちりりん。ちりりん。  自転車のベルが鳴る。  彼女を後ろに乗せたその影が、砂利道を走る。  二人の間にある微妙に空いた空間が、焦れた思いを代弁してくれた。


WRITTEN BY

サカヅキ

二次創作や夢を好き勝手に書いています


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